ドメーヌ・ポンソは、モレ・サン・ドニの老舗名門ドメーヌであり、特級畑クロ・ド・ラ・ロッシュの最大の生産者です。モレ・サン・ドニにおける新興の大ドメーヌがデュジャックなら、伝統的大ドメーヌはポンソといえるでしょう。その歴史はデュジャックより100年も遡り、1872年、ウィリアム・ポンソ氏がモレ・サン・ドニにあるワイナリーを買い取ったことに端を発します。1932年には当時まだブルゴーニュでは珍しかったドメーヌ元詰めをいち早く始めた先駆け的存在として一目を置かれていました。

3代目となるジャン・マリー氏はブルゴーニュのピノ・ノワールのクローン選抜の先駆者となり、非常に高く評価されています。1980年代前半からは息子ローラン氏が当主となりワイン造りに従事。温度センサー付きラベルや独自に開発した合成コルクの採用、雹害防止ロケットの使用など、革新的な技術を取り入れ、ワインの品質を向上させました。
2017年、ローラン氏がネゴシアン「ローラン・ポンソ」を立ち上げドメーヌを去り、現在はローラン氏の妹ローズ・マリー女史が5代目の当主を務めています。醸造に関しては支配人代理も務めるアレクサンドル・アベルが醸造責任者を務め、ローラン・ポンソと同じ哲学をもち、そのスタイルを維持し続けています。

ドメーヌ・ポンソの魅力は何といっても所有する畑の数々。設立当初からクロ・ド・ラ・ロッシュに加えて、クロ・サン・ドニ、シャルム・シャンベルタン、クロ・ド・ヴージョといった、珠玉の特級畑を所有し、2009年にはコルトン、コルトン・シャルルマーニュ、コルトン・ブレッサンド、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ、2010年にはモンラッシェを新たにリリースし、そのラインナップはさらに豪華なものとなっています。
また、モレ・サン・ドニにある、アリゴテ80％以上で造られる貴重な白ワイン「モン・リュイザン」を造っていることも有名です。こちらはコート・ドールで唯一アリゴテが認められている一級畑となっており、ポンソが単独所有しています。1911年に植えられた古樹のアリゴテから造られるワインは、通常のアリゴテのイメージとはかけ離れた、複雑で深みのある味わいとなっています。

ポンソではブドウ栽培もワイン醸造も人の介入を可能な限り排除。ビオロジックともビオディナミとも異なるアプローチの自然栽培をとっています。収穫量は15hl/haと超低収量で、これはロマネ・コンティの収量を下回る少なさです。醸造は「決まりのないことが決まり」というスタイルで、ヴィンテージごとにブドウの状態は異なるため、除梗の実施有無、ピジャージュの頻度など、その年に応じて最良の方法を選択しています。
こうして生み出されるポンソのワインは非常に個性的で、理想の状態で熟成させたワインは、驚くべき色香を放ち、その状態は20年も30年も保たれます。ブドウ本来のエキスと旨みが強く、透明感のある仕上がり。このピュアな味わいがポンソの最大の魅力です。